書店が推している本。
すなわち、流行りの本に手を出したのは久しぶり。
目立つ場所に平積み。
話題であろう事、間違いなく。
著者も内容も知らぬが、読んでみようと思いて手に取った。
日曜日に購入して。
月〜火で読み終えた。
夢中になれる本である事、保証する。
「イノセントデイズ」
著者 早見和真
あらすじを引用。
田中幸乃、30歳。
元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪により、彼女は死刑を宣告された。
凶行の背景に何があったのか。
産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人など彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がるマスコミ報道の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。
幼なじみの弁護士は再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。
死刑囚の話。
名前は、田中雪乃。
彼女が死刑執行に向けて連行される所から物語は始まる。
テーマが死刑。
決して軽い話ではない。
"少女はなぜ、死刑囚になったのか"を読み解く物語である。
本作は、田中雪乃たる人物を他者の目線で描きながら紡がれていく。
つまり、他者の視点から田中雪乃たる人物像を炙り出す形で構成されている。
再び引用すると。
産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人など彼女の人生に関わった人々の追想から田中雪乃の人物像を描く
のである。
田中雪乃は死刑に値する、とマスコミで描かれている点。
対して、近しい人物から見た彼女の姿にギャップがある事に主題がある。
つまり、主観的見地から、彼女は死刑に値しないのではないか?と読者に思わせる作品である。
では、何故?との興味に読者は吸い寄せられていく。
様々な人物から語られる田中雪乃の人物像が徐々に読者の中に形成される。
まるで、初冬に降り積もろうとする雪のように儚い存在であると気づく。
読者は思う。
"田中雪乃は本当に死刑に処されるべき人物なのか?
2パターンの結末を想起する。
(言ってしまえば、田中雪乃は犯罪を犯したのか?否か?死ぬのか?生きるのか?である。)
その点、ミステリーのようなドキドキする要素を含む。
故に、最後まで緊張感を保つ構成となっている。
結末に対する解釈は人それぞれ。
(解説の辻村深月さんの見解は胸を打つ。)
この点は読んで自分なりに咀嚼して欲しい。
イノセントとは、"潔白な・純潔な・無邪気な・無垢"との意味である。
イノセントな存在が壊れようとしている時、人は守りたいと思う。
守りたいとの感情が芽生えた時、本作は読者の感情を揺さぶる 。
雪乃、たる主人公の名前にもあやかっているが。
本作の感想は・・・
まるで、雪の結晶を崩したくないとの気持ちに似ている。
儚くて、壊れやすいもの。
でも、美しくて守らなければいけないもの。
そんな存在にどう向き合うのか?との話である。
映画でいうと、グリーンマイルに似ている。
壊してはいけないものを壊そうといる感覚。
手を差し伸べる事ができたなら、どんなに楽な事か。