「パレード」
吉田修一
「中古品はこわいよね」
「なんで?」
・・・
「だって、”誰が、どう”使ってたものかわからないじゃん?」
「今あるものは、物質において完結しているのだけど。裏側に何があったのか?はあくまで想像に起因する。」
「”想像しなければ、ただの物。それ以上でも以下でもない”知らぬが仏。」
・・・
「そう思うから、時々見て見ぬふりをしてやり過ごす。知らなければ、同じだもの。」
「たとえ、中古品が昔、連続殺人犯のものであったとしてもね。」
・・・・
「そんな事を言われると、中古品を使いたくなくなりますわ」
本書を読んで、こんなやり取りを思い出した。
“表面上と裏側の乖離”との点で一致する。
つまり、目に見えているものだけが全てじゃないって事、当たり前だけど。
本書は男女4人の若者が共同生活をしている話。
一般的な大学生像が当てはまる良介の語りから物語が始まる。
順番に語り手が変わり、物語が進んで行く。
一体、何が主題なのだろう?と思いながら、テンポが良いのでスルリと読める。
ふむふむ、共同生活をしている男女4人の群像劇かな?とか思いながら読んでいたものだから、最終的にはガツンとやられた。
解説の川上さんは本書を”こわい”と表現する。
そうそう、その通り。本来あったはずのものを上書きしたような”こわさ”。
例えば、赤い壁があったとして、「珍しいなぁ」と思っていたら、血で染められていました、と聞いたような感覚。
(物語の中では、ピンクパンサーとビデオで象徴的に表現されていて、見事。)
大丈夫、普通に考えていると赤い壁にしか見えません。
ホラー的なこわさではないので、苦手な人はご安心。
一言だけ、個人的に味わった感想。
オセロの端と端が取られて白が全て黒に変わったかのような小説。
もう一歩。
カラーの写真を白黒にしてみたら、恐ろしい心霊写真が写っていました、のような。(カラーで見る限りは、楽しい友達の写真なんだけど・・・。)
なぜ、そう思うかは読んでのお楽しみ。
おすすめです。