「ドミノ」
東京駅で27人+1匹の人生が交錯する話。
断片の交錯が各登場人物の人生を膨らます。
いい小説は登場人物が旧知の仲であるかのような錯覚に陥るが、27人+1匹でそれを実現しているからスゴイ。
小説の中ではなく、本当に27人と1匹が生きているかのような感覚。
冒頭の27人と1匹からの一言が秀逸。キャラクターが浮かび上がる。
物語は心地良い荒唐無稽感(微妙に現実離れしている)で進む。
悪い人も憎めないように描く、微妙なリアリティーのなさ。
小説の醍醐味であり、読んでいて気持ちがいい。
各人が色々な思いを持って、東京駅へ吸い込まれていく。
・熱血柔道少女OL。比類なき正義感を持つ。甘いお菓子が大好き。(絶対に10円玉を交番に届けるタイプ)
・老人。ネットで知り合った顔も知らない俳句仲間に会うために上京した。(ご老人、オフ会ですか?)
・完全に過激派爆弾犯の男。(。。。)
・嬉しい事があってスキップしていたらハイヒールが折れた母親。(ざまあ)
・ミステリーが好きなのか、お互いが好きなのかよくわからないミステリーサークルの男女。(こういう奴いる)
・OLえり子様。ただし、元々は伝説的な・・・。(カッコよすぎる)
・ミステリー映画監督。こいつの発想はなんか抜けてる。(そんな作品を作るな!!!!と叫びたくなる。)
・東京駅に到着した頃には、浜に打ち上げられたトドみたいになっていた部長。(むごすぎた)
・天才小役が2人。最後のコメントが素晴らしい。1人はオーディション中に下剤を盛られる。(心理描写がよい)
・シー、イズ、ミコさん。(“気”が読めるそうです。)
・自分アルコール度数100%。自分に酔いしれすぎた、自分アルコール中毒のモテ男。(殴りたい)
・まじめなの?単純なの?一途なの?よくわからない女。ただし、まじめな女がヒステリック反応するとこうなる。(怖い)
・見かけは派手。だけど常識人。美人さんですね。(会ってみたい)
・ペット。過去の経験もあり、臆病になってしまった。迷子になった時は動かないタイプ。(いい味出してる)
・ピザ屋の男の子。(「姐さん!!!」って言葉が彼ほど似合う奴はいない)
・・・・など。
読み返さなくても、登場人物の特徴が挙げられる。
彼らの人生は東京駅を舞台にして、すれ違う。
我々、読み手だけが、つながりを楽しめる。
たしかに、”ドミノ”みたい。
カタカタカタカタ・・・・・とのリズムで軽快に進んでいき、ごちゃごちゃになり、最後にストンと落ちる。絶妙。
東京駅が違って見える、人生のすれ違いはおもしろいものである。