せっかくなのでGWに読むべき本について考えてみようと思う。
GWと言えば旅行です!!!!
GWと言えば、世間一般で言うと旅行。
ただし、僕の周りには「人混みが嫌だからどこにもいかない」と明言している人が多い。
(何故だか、こういう人達は聞いてもいないのに、GWの予定を話したがる。)
なので、旅にまつわる本。
まずは、これ。超弩級に有名な作品。
ただし、GWの初日以外に読んではいけません。
(初日でも遅すぎるぐらい。)
何故なら、とりあえず旅にでたくなるから。
GW最後の日に読み始める者がいたら勇者である。
現実世界へと時が刻々と進むのと、全く逆のベクトルを生み出す。
現実への下りエスカレーターを猛然と駆け上がらせられる羽目になる。
GW明けが嫌で嫌でしょうがないサラリーマン諸君は、辞表を書いた後で読み始めた方が良い。
(いや、蒸発の方が似合っているかも)
話はシンプル。
筆者、沢木耕太郎が各地を旅した記録である。
台湾、マカオから始まり、各地を旅する。
この本に影響を受けて、サラリーマン生活を辞めた人がいるのではないだろうか?と思える程。
抜群におもしろい。
確か、本書の言葉だったと思うが。
「旅は同じ場所を訪れても、全く同じ体験にならない。別物である。」と語っている。
故に、人は旅をしたがるのだと思う。
旅の面白さと、無限に広がる可能性。
そして、世界の広さを知る。
・・・
テーマが"旅"に触れたので、次。
旅は旅でも、意味合いが全く異なる。
"とてもとてもかなしい旅。
だけど、2人はその旅が一生続けばいいと思っていた、と信じたいんだよね。"
と僕は感想を書いた。
映画化もされている。
「悪人」吉田修一
本書について、"旅"カテゴリーで語るのはいかがなものか、とも思うのだけど・・・。
逃避行もまた旅である。
僕は、最近この作品を読んだのだが、感銘を受けた。
人物の主観と客観を巧みに入り交じらせる事で見事に人物像を浮かび上がらせている。
なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう
――九州地方に珍しく雪が降った夜、ひとりの土木作業員が、保険外交員の女性を殺害してしまう。そして、出会い系サイトで知り合った女性と逃避行に及ぶ。残された家族や友人たちの思い、そして、揺れ動く二人の純愛劇。一つの事件の背景にある、様々な関係者たちの感情を静謐な筆致で描いた渾身の傑作長編。
紹介文引用。
2人の主観によって造られた純愛の世界観は読者を引き込ませる。その筆致が素晴らしい、としか言いようがない。
ストーリーは熱病に罹ったかのような、と表現していいものか。客観的に考えると、2人の逃避行は「そんな事しますかい?!」と大声で叫びたくなるような話なのである。
たけど、2人にとっては間違いのない真実で。
読者は2人の真実に引き込まれる。
"純愛"が持つ危うさが鮮やかに描かれる。
この世界観に浸る感覚。
読者すらも2人の主観しか真実として受け入れてはいけないような錯覚に陥る。
この心情の持っていかれ方が尋常ではなかった。
例えば、16歳の女子高生が18歳の男子高校生と結婚する!と決心して、籍を入れようとする。
当然、親は止めようとする。
「あんたたち、なんもわかってないんだから!」
だけど、16歳の女子高生が18歳の男子高校生はこう言う。
「私たち愛し合ってるんだよ!」
本書は、この構造に近い。
だけど、祐一と光代の世界観は強烈に読者を吸い込む。
「愛し合っている2人なら・・・」と思わせてしまう力がある。
ただ。
ただね。
読み終えた時、同じ事を思うか?との点で、本書が単純な純愛小説と一線を画する所がある。
より複雑で濃密な、読後を保証。
テーマである"悪人とは誰か?"との問い。
色々な解釈はあると思うのだけど、だけどね。
主観的に誰もが自分を悪人だと思っていない点。
そして、悪人を造りだしているのは何か?との点にポイントがあるような気がする。