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のらねこ日記

読書、映画、考え事など。色々なテーマを扱える人になりたいです。

よりバカバカしく、おもしろく、格調高い「四畳半神話体系」森見登美彦

作家:森見登美彦 小説:日本人作家

おもしろさ、バカバカしさ、格調の高さの三要素がここまで兼ね備えられた作品はそうそう出会えない。

 

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「四畳半神話体系」

森見登美彦

 

森見登美彦さんワールドが好きな人。

・バカバカしい話が好きな人。

ならば100%楽しめる事を保証できる。

 

冒頭を引用する。

大学三回生の春までの二年間、実益のあるのことなど何一つしていないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化、などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか。

責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。

私とて誕生以来こんな有様だったわけではない。

生後間もない頃の私は純粋無垢の権化であり、光源氏の赤子時代もかくやと思われる愛らしさ、邪念のかけらもないその笑顔は郷里の山野を愛の光で満たしたと言われる

〜〜〜

 

主人公である"私"の語り口は終始、かくの如しもの。

大学三年である"私"が過去の二年間を振り返りながら、今を生きる話である。

よって、基本的に大学生活の話であると思って良い。

 

話の構成は第1話〜第4話まで。

第1話 映画サークル「みそぎ」

第2話 樋口師匠の弟子

第3話 ソフトボールサークル「ほんわか」

第4話 秘密機関「福猫飯店」

 

4つの話はパラレルワールドになっている。

大学一年生の時にどの道を選択したか?で過去の二年間が変わり、大学三年生の私がいる。

主人公は全て同じ"私"である。

なので、冒頭が4話とも引用したものと全く同じ。

 

"ああ、あの時、ああしとけばなぁ〜"なんて思う事、人生に何度もあるが、主人公も同じである。

4話、全てにおいて「あの時、あっちの道を選んでいれば、バラ色のキャンパスライフ、傍らには黒髪の乙女が・・・」とぼやいている。

あの時に、あの選択がどのような人生を導くのか?

どんな人と出会って、どんな事をするのか?

・・・

詳しい事は触れないが、こういうパラレルワールドの描き方もありだな、と感心する。

 

さて、本書の中で、最も重要たる人物として"小津くん"がいる。

 

主人公である"私"の第一印象を引用すると・・・

ひどく縁起の悪そうな顔をした不気味な男。繊細な私だけが見えることができる地獄からの使者かと思った。

 

 第一印象でここまでのインパクトを残せる人物もそうそういない。

作中で彼は印象を遥かに凌駕する悪戯を繰り返す。

マシンガンをぶっ放すかの如く、悪戯機関銃を放ち"私"の学生生活を彩る。

神出鬼没、疾風迅雷、電光石火。

常軌を逸するバイタリティー。

本書を読み終えると、超人とは彼の事を指す言葉であると気づくに違いない。

もはや、尊敬に価する程の人物だと思う。

彼の所業を読むだけでも価値がある、と僕は、批判を恐れずに太鼓判を押したい。

 

ただ、一つ言わせて欲しいのは、小津くんの生き方、人生の楽しみ方はマネしても良い所だと思うのだよね。

 

森見登美彦さんの作品は何冊か読んできたので、並べて比較できる。

・文学的なのは「太陽の塔

・感動的なのは「ペンギンハイウェイ」

・暖かい気持ちになれる「恋文の技術」

その中で、本書は、よりバカバカしい、と言える。

ただ、実は、プロットの妙が光る作品であると思っている。