誰にでも訪れうる恐怖「夜の来訪者」
「夜の来訪者」たる本について、全く予備知識のない方。
あなたは幸運な人である!
すぐに、本屋に行き、「夜の来訪者」を購入して読み始めた方が良い。
ただし、何点か注意事項がある。
・表紙にあるあらすじを読んではいけない。
・解説も読まない方がいい。
・ネット検索は厳禁である。
そんな事をしない方が楽しめる事を保証する。
岩波文庫に収録されているため、あらすじが表に書いてある。
そのため、あなたは「夜の来訪者」を手にしたら、注意深く本の裏面を上にしてレジに持っていく必要がある。
(店員さんもバーコードが読み取りやすいため、感謝するはずである。)
ただ、その店員さんが気さくな人で、
"この本おもしろいですよね!!!・・・あの場面の〜"
と話しかけてきたら、口封じに顔面パンチを食らわせる必要がある。
それでも、お喋りが止まらないようならば、バックドロップだ。往復ビンタでもよい。
まぁ、つまり、ネタバレは厳重注意なのである。
常識的な本屋であれば、ブックカバーは?と聞かれるので、「はい!お願いします。」と元気良く答えよう。
そうすれば、あらすじは封印される。
※ただし、本屋さんがコスト削減の煽りを受けて、ブックカバーの紙が極端に薄くしている場合は気をつけるべし。
その恐ろしい表紙である。
※あらすじが読めないように小さめにしておきます笑
※絶対に拡大はしないでください。
「夜の来訪者」
J・B プリーストリー
はい。何故、ここまでしなければならないか?
・・・
読んでからのお楽しみです!!!
・・・
あらすじに少々、"いや、知らない方がいいでしょ・・・"と思われる事が書いてあるのは古典的作品だから、である。
筆者は、1984年 生〜1984年 没。
そのため、少々古めかしい部分があるのはご了承ください。
ただし、この作品が古典として読み継がれるべきであろう事、読めばわかります。
と、まぁ、このような紹介の仕方をしてしまった限り、ある程度の予備知識を持ってしまったに違いない。
ぼんやりと紹介させていただこう。
本書は戯曲なので会話劇である。
非常にシンプルな構成の中に感情が渦巻いている。
裕福な実業家の家族が一家団欒の時を過ごしている事から始まる。
一家が集まり、食事をしている。
娘が結婚するらしい。未来の旦那も一緒だ。
順風満帆、幸せなひととき。
そこに、警察が訪問する。”ある女性が自殺した”と・・・。
テーマは"警鐘"。
非常に暗喩的であり、怖さがある。
夜の来訪者とは、人間の本性が浮き彫りになる存在だ。
そして、誰にでも来訪しうる存在だと思う。
さて、この家族はどうなるか?
自殺した女性との関わりは?
ミステリー的な要素があり、スリリング。
無駄のない会話劇であるためすぐ読める。
ただし、会話によって削ぎ落とされた結果、残る人間の本性に戦慄が走る。
そして、人の良心への鋭く尖った批判の矛先でもある、と感じた。