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のらねこ日記

読書、映画、考え事など。色々なテーマを扱える人になりたいです。

学生時代の肝試しにて。

今週のお題「ゾクッとする話」

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幽霊は信じぬ性質である。

というより、そういう場所には赴かず。

学生時代は"肝試し"と呼ばれるものは避けて通ってきた。

"あんなものは女子と一緒に暗闇を散歩したいが故の姑息な策略であろう。そんなに歩きたいのなら勝手にしろ。"

と斜に構え、安住の地であるホテルで安眠した。

仲良さげに帰ってきた男女のカップルを見て、鼻で笑う余裕があった。

あの頃の境地は一種の悟りに近かったと思ふ。

 

ただ、学生時代たるもの、"任意同行"の肝試しもあれば、"強制連行"の肝試しもある。

つまり、前者が生徒が自発的に自由時間を利用した催しであるのに対し、後者は先生が一枚噛んでいる。

先生が身を乗り出して企画する以上は行かねばならぬ。

何故か?

もちろん、"不満分子と見なされ目をつけられるのを避けるため"である。

社会人となった今であれば、この境遇を"仕事だからね。"と表現する。もしくは、"大人の付き合いだよ"と。

 

さて、"任意同行"の肝試しは私的思惑が大いに働くが、"強制連行"の場合、公明正大・男女平等・嘘偽りなしが信条となる。まぁ、要するに、ペアはくじ引きで選ばれる。

 

"どうせ行くからには楽しまねばならぬ。"

これは、私が子供の頃から培ってきた人生観だ。

そして、楽しむためにはペアが重要になる、と私は結論付けた。

よって、くじ引きは渾身の力を込めて引かなければならない。指先に神経を集中させた乾坤一擲の大ばくちである。

外れた場合の状況は語るまでもない。

(今思えば、相手に失礼な話であるが、当時の私は精神的に未熟であった。

 

私は素早く周囲を見渡した。

そして、天地が引っくり返るような重大な事実に気づいた。

 

!!!!!!!

合計人数が男の方が2名多い!!!!!

つまり、確実に"男・男ペア"が成立するのである。

周囲が皆、男・女ペアにも関わらず、である。

 

この事実に気づいた気持ちは、ゾッとした所ではない。

もはや、ハズレくじの次元ではなく、大ハズレどころか罰ゲームである。

先生への従順な態度を示し肝試し参加の意思を表明した者への仕打ちではない。

 

私は声を大にして発言しようかと思った。

「◯◯くんと◯◯くんは仲がいいので一緒に行ったらいいと思います!」

もしくは、

「△△くんと△△くんは今回の旅行の集合時間に少し遅れました!(だから、罰を受けるべきです。)」

もちろん、そんな勇気はなく、出かかった言葉をぐっと堪える。

・・・

・・・

・・・

そして、周囲がざわつき始めた。

"むっ、愚民どもめ、ようやくこの事実に気づいたか・・・"と私は心の中で思ったが、早く気づいた所で何もできない。

 

先生はこの事実に気づいているのか?

と、チラリと先生を見る。すると、人数を数えているではないか。

"おお!我が意、通じたり!"と期待して待つ、と。

・・・

先生は笑顔でこう言った。

「おや、男が多いな〜。しょうがない、1組は"男・男"のペアだな!」

私は、先生に殴りかかろうと思った。

もし、幕末であったなら間違いなく抜刀していただろう。

だが、理性がなんとか荒ぶる気持ちを抑えた。

 

憤怒である。

"しょうがないだと????"

私は、先生のこの発言を"しょうがない発言"と勝手に名付け、心に刻む事にした。

そして、呪詛のように"おまえはどこかの大臣だったらしょうがない発言で辞職する羽目になるぞ"とつぶやいた。

 

こうなると、もう運任せである。

我が日頃の行いを天がどこまで見届けてくれているか?しかない。

 

さぁ、くじの時間である。

くじを引く時、私は心の中で"うぉーーーーーーー"と叫んだ。

簡易的に紙切れで作られたくじは手汗で湿り気を帯びている。

 

先生が笑顔で言う。

「はぁ〜い。じゃあ、同じ数字でペアになってください♫」

私は、この呑気な先生に殴りかかろうと思った。

もし、戦国時代であったら火縄銃を打っていただろう。

しかし、社会的規範が私をグッと堪えさせた。

 

ざわざわ

がやがや

・・・

次々と、ペアが決まっていく。

・・・

「君、何番???」

とある女の子に聞かれた。

 

その時、少し離れた場所から、2人男の咆哮が聞こえた。

それは、断末魔の声であり、世の中の絶望を一身に背負った声であった。

これから、男同士で肝試しに出かける悲しい悲しい悲痛の叫びであった。

 

私は勝利を確信し、手に持った紙切れを見ると、その女の子と同じ番号であった。

「じゃ、行こうか。」

私たち男子諸君にとって、この時点で肝試しは終わったようなものである。その証拠に、肝試しの事なんざ、全く記憶にない。

 

※ちなみに、この時の女の子が今の妻であるなんて、ロマンチックな話ではないのであしからず。