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のらねこ日記

読書、映画、考え事など。色々なテーマを扱える人になりたいです。

日常そのものに侵食する怖さ「残穢」

怖い。

怖い。怖い。

本当に怖い小説は日常の風景を変える。

"怖さが日常に棲みつく"とでも言えようか。

 

本書の怖さは日常そのものに侵食する。

怖いのは、"目に見える何か"ではなく、"目に見えない何か"である。

下手すると、目に見える風景が一転するよ。お気をつけあれ。

 

残穢

小野不由美

 

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畳を擦る音が聞こえる、
いるはずのない赤ん坊の泣き声がする、
何かが床下を這い廻る気配が……。
だから、この家には人が居着かない。
何の変哲もないマンションで起きる怪異を調べるうち、
ある因縁が浮かび上がる。
迫りくる恐怖は、どこまでが真実なのか。
──衝撃のドキュメンタリー・ホラー!

 

(実話かどうかは知らないが)

物語は筆者宛の一通の手紙から始まる。

転居したばかりのマンションの部屋に"何かがいるような気がする"と感じている女性のものからであった。

筆者は、その話に既視感あり過去の手紙を探したら、同じ住所から怪異現象を体験したとの手紙が来ていた。

 

"このマンションには何かある・・・"

筆者は、女性と共にマンションについて調べていくのである。

 

ドキュメンタリーホラーとされているのは、筆者が調べていく過程が描かれているから。調査の過程で、次々と知る事実。死の連鎖的なつながり。

"このマンションには何があるのか?"

"聞こえてくる畳の擦る音は何なのか?"

・・・

 

鋭いのは、"以前、この土地に何があったのか?"を誰も知らない or 意識していない現代人の意識を見事に突いているから。

そう。人は意外な程に過去にあった風景を忘れる。

例えば、街を歩いていて、"あれ?昔、ここに何があったっけ?"と思う事が多々ある。

異物感。"そこがかつて違う建物であった事"だけは確かなのだが、 何であったか?がわからない。

ましてや、知らない土地ならばなおさらの事だ。

 

自分が住んでいる家が建つ前は何があったか?

そんな事をくまなく調べる人はそういないであろう。

一見何の変哲もないものに見える風景。

だけど、そこが忌まわしい過去が染み付いた場所だったとしたら?

誰かが、死んだ場所だったとしたら?

 

本書が巧みであると思うのは、ドキュメンタリー的に描かれているためリアリティがある事。

因果関係がありそうでなさそうなギリギリの線を行き来する。

加えて、筆者の冷静な状況分析がいい味をだす。

故に、実話なのか?と思ってしまうのである。

(繰り返すが、実話かどうかは知らない。そうかも?と思わせるのが筆者の筆力。)

 

読み終えて思ったのが一つ。

目に映らない過去を含めるなら、僕たちは必ず"死穢"に触れている。

だけど、それを意識する事はほとんどない。

 

例えば、どこかの駅で人身事故が起きる。

そして、電車が遅れ、人々から"チッ"と舌打ちが聞こえてくる。

"死ぬなら、迷惑かからない所でやってくれよな。"とか。

・・・

"人身事故"と聞いて、"まず思うのは電車の遅延だ。"

決して、"人命の安否"ではない。

ともすれば、人身事故の状況を楽しそうに伝えてくる者もいる。

・・・

麻痺しているのだろうか?

本書を読むと、"死"についてもう一度考え直したくなる。