"信じる"とは、とても辛い事だと思う。
"信じる"とは、苦しくて重い・・・。
誰かを本気で信じた事があるか?
たとえ、何があっても、受け入れられるような。
そんな風に人を信じた事があるだろうか?
・・・
この映画を観て、そんな事を思った。
「怒り」
吉田修一の原作を映画化した「悪人」で国内外で高い評価を得た李相日監督が、再び吉田原作の小説を映画化した群像ミステリードラマ。
名実ともに日本を代表する名優・渡辺謙を主演に、森山未來、松山ケンイチ、広瀬すず、綾野剛、宮崎あおい、妻夫木聡と日本映画界トップクラスの俳優たちが共演。
犯人未逮捕の殺人事件から1年後、千葉、東京、沖縄という3つの場所に、それぞれ前歴不詳の男が現れたことから巻き起こるドラマを描いた。
東京・八王子で起こった残忍な殺人事件。
犯人は現場に「怒」という血文字を残し、顔を整形してどこかへ逃亡した。
それから1年後、千葉の漁港で暮らす洋平と娘の愛子の前に田代という青年が現れ、東京で大手企業に勤める優馬は街で直人という青年と知り合い、親の事情で沖縄に転校してきた女子高生・泉は、無人島で田中という男と遭遇するが……。
あらすじを引用
僕自身は原作を読んで映画を観た。
原作を読んだ人、そうではない人では印象が異なるかもしれない。
僕自身が評価するならば。
役者の豪華さ、それを見事にうまく料理した作品、だと感じた。
言うまでもなく、日本を代表する俳優が勢ぞろい。
これで面白くないわけがない、とも考えられるが。
一方で、豪華な食材が並びすぎても満足できない料理があるのも事実。
その点、本作は評価できる。
高級食材を仕入れています、との看板が掲げられたレストランに行き・・・
美味しい料理を食べました。
との感覚。
(それ以上でも、それ以下でもないのも事実だけど)
小説を原作通りに描いた映画、について。
僕個人は、小説>映画になる事が多い。
(異論は認める)
大抵・・・
・イメージと違った、やら。
・好きなシーンがカットされていたり。
・描写がしっかりしていなかったり。
等の不満がでるもので。
本作は、その類の不満が一切なかった。
ストーリーをある程度は把握しながらも見応えあり。
演出と役者の力だと思う。
内容を深く語るのは好ましくないので、思った事を漠然と。
本作のテーマは"信"である。
作中の、"信じてたのに"との言葉は重い。
自分の事を振り返り。
信じる事の難しさ、苦しさは身に沁みて知っている。
信じていたものを裏切られた時の苦痛は計り知れない。
ただ、一つ思う。
信じていたものに裏切られる事よりも、信じるべきものを信じられなかった事の方が苦しいかもしれない。
・自分は信じなければならなかった。
そう気付いた時の悲しみに、自分が同調した時。
僕は心を揺さぶられた。
様々な"信"があり、答えがある。
3つの別個のストーリーによって構成される本作の魅力はそこにある。