のらねこ日記

読書、映画、考え事など。色々なテーマを扱える人になりたいです。

「本日は、お日柄もよく」小説家が言葉の力を信じる気持ちを描いた作品

スピーチってのは、様々な場面で重宝される。

そして、上手い/下手に差がでる。

 

(自分の事は一切、棚に置かせていただいて)

 

下手で長いスピーチってのは犯罪の領域だと思う。

ポイントは、下手に加えて長い事・・・

下手なスピーチはヒヤヒヤするだけだが。

下手で長いと段々イライラしてくるもの。

 

そんなわけで、スピーチはだらだらと長くならない限りは及第点、との心持ちでいる。(気持ち的に楽だしね。)

 

僕のスピーチ経験は、兄の結婚式ぐらいなもの。

 

あの時は、事前に告知がなく。

・司会者と目が合って嫌な予感。

・司会者が段々近づいてきて予感を確信。

司会者が

「あれ〜。弟さんも結婚式に来てれているようですよ。」

と空々しく発言した瞬間、自分がまな板の上の鯉である事に気づいた。

「ちょっとお話聞いてみましょうかぁ〜」 

(うわぁぁぁ)

との流れ。

僕が陸に打ち上げられたアザラシみたいな目になったのは言うまでもない。

辻斬りにあったぐらいの不意打ちであった。

 

まぁ結果、個人的には・・・

急に振られた割にはGood Jobのスピーチを披露できた気がしている。

(もはや、口ではなんとでも言えますしね)

  

そんなわけでスピーチとは。

突如、舞い降りてくると混乱する。 

(ただし、事前に告知されると1週間前から緊張するんすよ。)

 

全く苦にしない人種もいるのだけど。

僕はそんな事はありません。

 

ただ、やらざるを得ない時は来ますので。

そんな時のために是非この本を。

 

「本日は、お日柄もよく」

原田マハ

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あらすじを引用。

OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。

ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。

それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。

空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。

久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された!目頭が熱くなるお仕事小説。

 

スピーチライターたる職業の話。

簡単に言うとスピーチの原稿を書く人である。

 

数々のスピーチが本編で披露されるので参考になる。

原田マハさんは言葉遣いが巧み。

 

お気に入りの表現を引用する。

「あー・・・」と、シロクマに襲われた瀕死のアザラシのような声を出した。

 P 9 

ユーモアがありますよね。

 

本編は、

・前半が結婚式のスピーチ

・後半が政治関係のスピーチ

との構成。

 

個人的には、前半部分が良かった。

後半部分は現実との乖離が気になってしまって感情移入できず。

ただ、あらすじ云々の前にスピーチが素敵なので読む価値あり。

 

本作を読んで。

著者の原田マハさんは"言葉の力"を信じているのだと思った。

小説家が言葉の力を信じる気持ちを描いた作品。

故に選ばれている言葉は珠玉。

 

小説において。

素敵な言葉ってのは、何においても魅力的。

 

同じ泳ぐでも

モルディブの綺麗で美しい水を泳ぐ(※訪れたことはない。)

埼玉市民プールを泳ぐ

のでは気持ちよさが違う。

同じように、小説におけるステキなフレーズは気分を高揚させるもの。

その点、原田マハさんは安定感あり。

小説の中に星空が散りばめられているかのように、キラリと光る言い回しがある。

 

あらすじを含めると、「キネマの神様」が好きだが。

本書も楽しめた。

 

anfield17.hatenablog.com

 

 

 

せっかくなので最後に本書の中にある"スピーチの極意"を引用。

スピーチの極意 十箇条
1.スピーチの目指すところを明確にすること。
2.エピソード、具体例を盛り込んだ原稿を作り、全文暗記すること。
3.力を抜き、心静かに平常心で臨むこと。
4.タイムキーパーを立てること。
5.トップバッターとして登場するのは極力避けること。
6.聴衆が静かになるのを待って始めること。
7.しっかりと前を向き、左右を向いて、会場全体を見渡しながらかたりかけること。
8.言葉はゆっくり、声は腹から出すこと。
9.導入部は静かに、徐々に盛り上げ、感動的にしめくくること。
10.最後まで、決して泣かないこと。

 

スピーチ教本として売り出せるのでは?とも思う。