"あれ?俺の小指、骨折してんのかな・・・?"
フットサルのキーパーでシュートを止めてから指が痛い。
不味そうな紫芋みたいな色。
友人は・・・
"膨れてシャウエッセンみたいになってるね、焼いて食べれば?笑"
と呑気な事を言う。
(心の中で、お前の指が折れちまえ、と毒づきながら)
やっちまったかな、との懸念。
じわじわ迫る痛み。
そんな不安要素を胸いっぱいに抱きながら、映画館に足を運び。
"骨折の懸念"を完全に忘れさせる程の劇場感のある映画に出逢った。
人間、骨折したかも?と思っている事を忘れるなんてそう簡単か事ではない。
「ラ・ラ・ランド」
映画館は劇場。
現実から乖離した別世界に人々を連れ出してくれる。
スクリーンの中に意識を没入できるのが魅力。
「ラ・ラ・ランド」は観客を夢の世界にいざなう。
煩雑な現実を忘れて。
明日の修学旅行が楽しみで眠れない布団の中の中学生のワクワク感を映画化したらこんな感じ。
終始、テンポが良くて、ワクワクする。
音楽が気持ち良い。
登場人物が突然、踊り歌う。
好みはあると思うが、個人的には好き。
花が咲かない女優志望の"ミア"と燻っているジャズピアニスト"セブ"の恋物語。
・ミアがエマ・ストーン
・セブがライアン・ゴズリング
まず、二人が魅力的、痺れる。
特にライアン・ゴズリングは近年観た映画の中で最もカッコいい男であった。
(ブルーバレンタイン、ドライヴを観て完全にファンになったのだが、惚れ直した。)
テーマは夢と現実。
現実も描かれる。
オーディションに落ち続けるミア。
仕事をクビになるセブ。
それでも二人は夢を諦めない。
"夢に恋する映画"だと思う。
夢について考えるのはどんな時でも楽しい。
寝る前に自分の夢に思いを馳せて眠れなくなる子供のような気持ち。
本作は、かつてみんなが経験したであろう"夢に恋する自分"を鮮やかに呼び起こす。
僕はもう30歳になろうとしているけど。
この歳で再び夢に恋する感覚を味わえるとは思わなかった。
だから映画館に足を運ぶのをやめられない。
大人になって現実の中に埋没していくと夢見る事を忘れる。
鬱屈する日々だったりする。
だけど、本質的に"人は夢を見たい生き物"なんだよね。
だから、「ラ・ラ・ランド」みたいな映画を観ると心踊る。
なお、本作。
夢の世界へディズニーランドみたいな位置付けではなく。
ほろ苦さと儚さを兼ね備えている。
ただの夢の世界へようこそ、との映画ではない。
現実の中にある夢だからこそ、より一層美しく輝くのだと思い知る。
音楽が素晴らしい。
世界観に浸りたくなる映画である。