刹那が故の美しさ「DIVE」
最上級にきらめいている小説。
青春時代にスポーツに明け暮れた人は誰しもこの小説でときめく。
ストレートをど真ん中にパシッと決められた感じ。
言葉にするのが野暮であると思えるくらい、
読後の感想は気持ちが良い。
「DIVE」
あらすじを引用
高さ10メートルの飛込み台から時速60キロでダイブして、わずか1.4秒の空中演技の正確さと美しさを競う飛込み競技。
その一瞬に魅了された少年たちの通う弱小ダイビングクラブ存続の条件は、なんとオリンピック出場だった!
女コーチのやり方に戸惑い反発しながらも、今、平凡な少年のすべてをかけた、青春の熱い戦いが始まる―。
大人たちのおしつけを越えて、自分らしくあるために、飛べ。
本作は飛び込み競技に挑む三人の少年の話である。
青春スポーツもの!
と言い切ってしまえば単純なのだけど。
スポ根的な話とは少々異なる。
これは、少年たちの決意の物語である。
少年たちの無垢な魂が、自分自身と向き合って前に進む決意をする力強い物語である。
そして、本書を読むと、"決意"とはかくも美しいものであると知る。
過去に紹介した記事はこちら。
音楽と飛び込みは種目が全く異なるのだけど。
自分の源泉的な熱い部分を撫で回すような感覚は一緒。
30歳を過ぎた男の気持ちとしては、
"あ、その部分掘り起こしちゃいますか・・・"
との気分。
具体的に言うならば、
"部活をやってた頃のような青春的なエネルギーを発散する感じ"
部活をやっていない人からすれば、
甲子園でヘッドスライディングをする高校球児が持つ無垢なイメージを抱いていただければ、と思う。
揺さぶられる、とでも言うか。
使い古された言葉でならば、感動、する。
小説の持つ力として、"呼び起こす感覚"が挙げられる、と思う。
つまりは、自分の人生に重ねて追体験できる感じ。
本作はまさにそういう作品である。
情熱とか、熱すぎるのは野暮ったい?
そうではなくて、
熱くて、痛々しいけれども、美しさがある。
この小説は青春が刹那である故の美しさを雄弁に語る。