『辞書を編む』 辞書を編む人のアンテナについて
『辞書を編む』(光文社新書) [新書] 著者 飯間 浩明
モスキート音たるものがある。
キーンとした非常に耳障りな音。
聴力検査を思い出して欲しい、あんな感じである。
聴力は年齢と共に変化し、30代になると17KHz程度の音は聴こえなくなる。
17KHzの音は大人は聴こえず、若者は聴こえる。
17KHzの耳障りな音を流して公園でたむろしている若者を追い払うために使ったりしていると聞いた。なんだかなと思いつつ…。
実際に試してみた所…
普通に聴こえた。
まだまだ若者である。
http://genbusai.blog6.fc2.com/blog-entry-56.html
ちなみに若干25歳の後輩は30歳以上が確定した。
聴こえる音と聴こえない音は年齢で変化する。
(モスキート音は肉体的な聴力の話であるが…)
同じように、見えるもの、感じるもの、考えることも年齢で変化すると思う。
そして、人それぞれ違う。
道を歩いていても、人は違うものに注目する。
まるで各自のアンテナが違う周波数の電波を拾うかのように…。
アンテナは人それぞれだからおもしろい。
超音波をキャッチするようなアンテナを持つ人は「あっ、そんな事に着目するんだ」と度々思わせてくれる。逆に、同じようなアンテナを持っていると、価値観が似ているので楽しい。
パフェに対するアンテナ…
動物に対するアンテナ…
音楽に対するアンテナ…
ファッションに対するアンテナ…
美人に対するアンテナ…(多くの男がこのアンテナだけ受信範囲がめっぽう広い)
等など。
アンテナは人生の経験値を土台に発達していくと思っている。
詳しいもの、好きなものに対するアンテナは反応が磨かれていくし、受信範囲も広がっていく。
例えば、僕なんかは渋谷を歩いても、アンテナは何もキャッチしない。圏外である。
一方、女の子が渋谷を歩けば、やれ109だ、やれクレープだ、あのファッションが…等など、となる。
ただし、女子中学生→女子高生→女子大生→社会人とアンテナは段々変化すると思う。
良くも悪くも、中学生の時に反応したものが、社会人になったら目にも止まらなくなったりする。
「もし僕が女性ファッション誌を一年間購読したら、渋谷はまったく違う風景にみえるだろう」と要約してみる。アンテナってのはそういう意味。
本題に入る。
『辞書を編む』を読んだ。
著者の飯間 浩明さんは『三省堂国語辞典』編集委員である。
いわゆる辞書を編纂する人だ。
この人のアンテナはめっぽうおもしろい、言葉に対するアンテナの張り方が尋常じゃない。歩く言葉のアンテナである。
それこそ、女性ファッション誌を読んで新しい言葉を探したりする。
→宅飲み、カチューム、バリエ、パンダ目とか知らない言葉を探す。
女性ファッション誌を新幹線で読み、赤丸をつける。
まるで宝の宝庫のように女性ファッション誌と向き合う。
街へでたら、新しい言葉を探しまわる。言葉を見つければ写真を撮る。
キャバクラって言葉を深く知るためにキャバクラへ行く。(これは絶対に本人が行きたかったに違いない…)
人のアンテナを知るのはおもしろい。
ましてや、特殊な仕事をしている人のアンテナはなおさら。
全編を通して、こんなアンテナ張っている人がいるんだ…と思わせるものがある。
そして、読み解いていくと自分の中にもどんどんアンテナが立っていく、そんな本である。
言葉って、おもしろい。
なお、辞書編纂の過程もかなりおもしろいのでおすすめ。