これはおもしろい!!!と思った本はブログに記録する事にした。
まずはこれ!!!
東京の人は「バカ」と言い、大阪の人は「アホ」という。
では、どこからどこまでが「バカ」の地域で、どこからどこまでが「アホ」なのか。これを正確に知る人は、かつて誰ひとりとしていなかった。
冒頭の一文である。
本書は、この疑問に飽くなき追求心と知的好奇心を持って挑む男の物語である。
実におもしろい本だった。
何が面白いかというと…
◆疑問からスタートする点
男はまず”?”を思い浮かべる。そこから調査が始まるのである。
読者もスタートラインは一緒。
男と一緒に調べ物をするかのような錯覚を覚える。
ドキドキ感が堪らない。
”疑問→調査→更なる疑問→調査”の繰り返しは、プロセスが楽しい。
例えば、冒頭の疑問。
東京では本当に「バカ」を使っているフィールドワークで確認をするのだが…
やり方が一歩間違えば不審者である。
バスを待ってベンチに腰をかけていたおばあさんに、後ろからこっそりと、抱きつくように目隠しをして「だーれだ」と尋ねる…。
要するに、”バカ”な事を仕掛けて”バカ”を言われようとする。
※結果的にはその後の会話の中で”バカ!”と呼ばれ、喜ぶ。
ただし、どこからどこまでが「バカ」の地域で、どこからどこまでが「アホ」なのかを知るためだけの本ではない。
それを調べる過程を楽しむ本である。
且つ、それこそが"調査する楽しさ"に他ならない。
そして、樹の枝のように広がっていく筆者の知的好奇心はみていて気持ちが良い。
本書を読んでいると、学ぶってこういう事だよね、と言いたくなる。
本書は「言葉は同心円上に広がっていく」との説が肝。
引用する。
「もし、日本がこのような細長い島でなかったら、方言はおおよそ近畿をコンパスの中心として、段々に幾つかの円を描いた事だろう。」
言葉の中心は常に古都である京都にあったとする考え方。
そこから言葉が段々に伝達して円を描くと。
筆者の調べた地図でみてみると、ああナルホドと思える。
本書は言葉が人の移動に伴って伝達されるものである時代の事を調査している。
例えば、北海道の方言である「ハンカクサイ」との言葉は、近畿から物資を運ぶための船に乗って北の地方へ伝わったとされる。
人と言葉が一緒に動く。そして言葉が伝わっていく。
何だろう、ロマンを感じる。
ただ、現在の社会は言葉のみが先にどこにでも飛んでいく社会となった。
言葉が人以上の早さで動けなかった時代と何が変わっていくのだろうか…とも思った。
言葉に興味がある人。
そして、調査する楽しさを思い出したい人におすすめする。