「フォークの歯はなぜ四本になったか」
「フォークの歯はなぜ四本になったか」
〜実用品の進化論〜
ヘンリー・ペトロスキー
忠平美幸 訳
"電車のつり革は何故このような形なのだろう?"
今まで考えてもみなかった疑問が次々と頭の中を駆け巡る。
日常の何故?が確実に変わる、かなりお勧め。
タイトルにある通り、 フォークの歯はなぜ四本になったか?が語られる。
他にも、ペーパークリップやファスナーなど、いわゆる日用品が何故このような形をしているか?を題材にしている。
タイトルを見て、"フォークなんて興味ないよ"、と思った者、考えを改めたほうがいい。
本書が優れているのは、フォークの歴史を詳細に語っているからではない。
フォーク、ペーパークリップ、ファスナー等の歴史を通して、"デザインの根底にある考え方"を考えている点である。
その考え方。
デザインとは、誰かしらが感じた不具合を解決した一つの到達点である。
発明とは、誰かしらが不都合を感じる事によってスタートする"不都合を解決しようとするプロセス"である。
つまり、人々は不都合を感じる事で実用品を進化させてきた。
例えば、フォークの起源はナイフ一本で食事をする事によって生じた不都合さである。
それが、ナイフ二本になり・・・と続いていく。
何が読み取れるか?
発明したいと思うなら、とりあえず使え!
との行動指針である。
"発明"との響きには、新しいモノを生み出す意味が含まれており、何となく”突然、閃くもの”との認識があるように思えるが・・・違う。
発明で重要になるのは、現状、何が不都合であるかを見極める事である。
発明家は常に不都合を感じている方が良いのである。
不都合の解決方法が新しい考え方に基づく場合に人はそれを発明と呼ぶのである。
僕はこの本を電車の中で読んでいたのだが・・・
次々と身の回りのモノに対する疑問が湧き上がってくる。
・吊り革は何故、電車の真ん中の列にはないのか?
・天井は何故、この高さなのか?
・誰しもが手すりに掴まれる設計になっていないのは何故か?
・座席は何故この数なのか?
等。
以上の疑問は、あるタイミングで僕の不都合を確実に解決してくれる。
ただし、あるタイミングでは、誰かの不都合を生み出すかもしれない。
ポイントはここである。
自分にとっての不都合=みんな不都合に思っている事ではない。
ただし、誰か(大抵の場合は多数派)の不都合を解決するために現在のデザイン(形)に落ち着いていると考える事ができる。
その考え方が、日常生活において、何故、この形なのか?との疑問を生み出すのだ。
特に仕事で、何かを創る、変えようとする、改善する場合。
本書の考え方は非常に役に立つ。
使ってみないとわからないのだよ。
使った結果、感じた不都合が全てのスタートである。
と。
技術とは、使用者との対話によって進化する。
ある大陸で生まれた技術が違う場所で活用されるケースは多々ある。
本書を読んで思ったのだが・・・
一人の天才が書斎で頭を抱えて考えるより、
百人の凡才が実際に使用してみて考えた方が、実用品は良いものができる。
最後に引用。
P76
「発明家は、自分の目に入ったものに不満を覚えがちです。」
それこそが、原動力なのである。