美術の楽しみ方入門として〜楽園のカンヴァス〜
絵画はシンプルな見方をすれば良いのよ、と言われた事がある。
基準はただ一つ。
"家に飾りたいか?否か。”
一番家に飾りたいと思った作品が、あなたのお気に入りだから、と。
僕は足繁く美術展に通うようなタイプではないが。
たまに行けば楽しめる。
そんな話をすると、"美術なんてわかるのかよ〜"などと冷やかされるが。
綺麗なものを鑑賞するとの意味では。
美人も美術も変わらないと思うわけである。
わかるどうこうではなく。
純粋に綺麗なものを鑑賞するのは楽しい事だと思う。
そんなわけで、少々は美術作品を嗜んだ時期がある。
故に、アンリ・ルソーと言われれば作風が思い浮かぶ。
と、言うより、好きな画家の一人、である。
彼の作品は一言で言うと、面白い。
そんなアンリ・ルソーにまつわるミステリーを小説にした作品を読んだ。
「楽園のカンヴァス」
あらすじを引用。
ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。
MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。
その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。
持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。
好敵手は日本人研究者の早川織絵。
リミットは七日間―。
ピカソとルソー。二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。
比較的、露出度の高い作品。
書店さんで平積みされている事が多い。
そこそこ分厚い本だが、サラリと読める事は保証する。
美術作品には物語がある。
本書を読むと、そう思うに違いない。
美術展に行けば、初期の作品が云々、〜に影響を受けてどうのこうの、との説明文をよく読む。
モネが日本の浮世絵に影響を受けた、なんて話は有名だし。
ムンクの作風が彼の人生を投影しているように思えるのも納得できる。
美術作品を純粋に"美"として楽しむ事もできるのだが。
物語の一部としても読み解ける。
絵画は画家の精神が投影されたもの、なのである。
画家が貧乏であったか?どうか?
家族構成は?云々。
・・・
世の中の大抵の事象は、"線で読み解くと面白い"
つまり、人生が確かに存在していると実感する事が肝要。
目の前に存在する絵画に対してストーリーを想像できるか?がポイント。
物語の先にある作品であると思うかどうかで感じ方は変わる。
本作はストーリーとしての美術をうまく描いている。
美術の楽しみ方入門としてオススメできるレベル。
美術に手を出したいけど敷居が高いなぁ、と思っている人は読んでみたらどうだろう。