「ユリゴゴロ」
私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通とちがうのでしょうか。
本作はこの一文がキーとなる恋愛ミステリー作品である。
冒頭の一文は、主人公の亮介が実家で見つけた「ユリゴゴロ」と題されたノートに書かれたもの。
誰が書いたものか?
事実か、それとも創作なのか?
ミステリー的な構成。
共感や感動といった感覚ではないのだけど。
忘れ難い作品である。
結末も含めて考えた時に、一抹の疑問もあり。
賛否あり、だろうなとは思うものの。
自分を平気で人を殺す人間である、とする人物像を手記との形でじわじわと描かれる構成に妙あり。
ページをめくりたくなる。
主人公の亮介も同じ。
出所のわからないが、実家に存在したノート。
一体、誰がなんのために書いたのか?
それが物語の推進力。
実家にある見てはいけないもの、がもたらす禁忌的な匂い、は誰しもがわかっている事なのだけど。
人を殺す、との内容であればなおさらであろう。
知りたくないのだけど、知らなければならない。
あらすじを引用。
亮介が実家で偶然見つけた「ユリゴコロ」と名付けられたノート。
それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。創作なのか、あるいは事実に基づく手記なのか。
そして書いたのは誰なのか。
謎のノートは亮介の人生を一変させる驚愕の事実を孕んでいた。
圧倒的な筆力に身も心も絡めとられてしまう究極の恋愛ミステリー!
手記を盗み読む、との背徳的な心情もさることながら。
内容が孕む内包的な狂気が滲む。
印象的だったのは、幼少期のかたつむりを井戸に落とす描写。
そして、それを繰り返し行っていたとある手記の記述。
ざらりとしていて、口の中が渇くような感覚。
もう一度言うが、本作は恋愛ミステリーである。
手記にあるグロテスクな心情と恋愛要素の落差に合わせ読者の感情も振れ幅も大きくなる。
インパクトのある作品。
僕は本作に共感もせず。
実に面白い!!!と太鼓判を押すような評価もしていない。
細かな点に疑問は感じたが。
"ユリゴゴロ"と言われて「どんな作品だっけ?」とはならないと思う。
イメージに残る作品。
これは小説に対する賛辞であろう。
映像化されるのも納得できる。