話のじょうずな人。
特に、筋の運びのおもしろさで読者をひきつける小説家。
先を読まずにはいられない作品を次々と生み出す。
高校時代に図書館で宮部みゆきさんの作品を片っ端から借りた。
僕の読書ライフの礎をせっせと築いてくれた作家さんの一人である。
さて、何が面白いのか?との話になるが。
"優れたストーリーテラー"
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ストーリーに惹きつけられる、との表現がピッタリくるか。
率直に、次を読みたくなる、のである。
これほど素直な褒め言葉はない。
なお、僕の中ではストーリーテラーとして
・恩田陸さん
・東野圭吾さん
を同じく評価している。
恩田陸さんはより物語感を強く。
東野圭吾さんはよりドラマティックに。
どちらにせよ、共通して、作品にハズレがない、と思う。
なお、以下、批判ではないのだが。
(そこらへんも含めて僕は二人の作家が好き)
恩田陸さんは伏線をばら撒いて全く回収しないパターンがあったり。
東野圭吾さんはドラマティックを狙いすぎて少々クサイ感じになったり。
ツッコミどころをふりまいているのに対し・・・
宮部みゆきさんは最もバランスが良いイメージ。
あえていうなら、現代もの、ファンタジー、時代ものと、異なるジャンルに対して好き嫌いはあると思うが。
今回読んだのが、「悲嘆の門」である。
あらすじを引用。
インターネット上に溢れる情報の中で、法律に抵触するものや犯罪に結びつくものを監視し、調査するサイバー・パトロール会社「クマー」。
大学一年生の三島孝太郎は、先輩の真岐に誘われ、五カ月前からアルバイトを始めたが、ある日、全国で起きる不可解な殺人事件の監視チームに入るよう命じられる。
その矢先、同僚の大学生が行方不明になり…。
“言葉”と“物語”の根源を問う、圧倒的大作長編。
辛口コメントを残すなら。
少々、散らばった印象はあり。
現代を舞台にした小説かと思いきや、実はファンタジー。
僕は現代モノだと思い込んでいたので、ファンタジー要素はいきなりのルール変更。
寝耳に水。
どっちかに絞っても良かったのでは?とはネット上のレビューでも多く見られたコメント。
ただ、その点を除けば。
宮部みゆきさんの作家としての力に感服。
読もうと思う気持ちの止まらない事。
物語の推進力が強い事。
表現するならば・・・
ジェットコースターのように危うさを伴う推進力ではなく。
舗装された道路をトヨタのハイブリット車がすぅーっと進んでいくような気持ちの良い推進力、である。
物語に読者をうまく乗せていく。
宮部みゆきさんが優れたストーリーテラーと評される所以であろう。
なお、本作について。
僕個人の好みによると、ファンタジー要素なら「ブレイブストーリー」だし。
現代のミステリー要素なら「理由」「火車」の方が印象に残る。
ただ、「悲嘆の門」が、やっぱりこの人は面白いや、と唸らせる作品であるのは間違いない。
作品というより、久々に宮部みゆきさんの作品を読んだなぁ、との感想を抱いた。