儚い羊たちの祝宴
いわゆる、人肉を食べる事、である。
人間がやってはいけない事の中には、
①環境によって刷り込まれたもの
②人間の本能的に拒絶するもの
に分かれる、と僕は考えるが。
カニバリズムは後者だと思う。
①環境によって刷り込まれたもの、については。
(世の中の女性からすると猛反発かもしれないが)
例えば、一夫多妻制、とは子孫を増やすために有益な事(=本能的には受け入れるべきもの)であると思う。
ただ、環境がそれを許さない。
不倫、との言葉が意味する通り、倫理的に許されない、のである。
とかく、この、本能的にやってはいけない事(禁忌と表現される)の呪縛は強いものがあり。
今回読んだ小説は、その呪縛的な所を漂っているような小説、である、と表現したい。
「儚い羊たちの祝宴 」
この作者の作品は「満願」に続き、二つめ。
印象として。
ダークな部分が実に印象的。
あらすじを引用
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。
夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。
翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。
甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。
米澤流暗黒ミステリの真骨頂。
思考回路、がダークなのである。
怨恨、などと表現できる、単純な話ではなく。
ネジが外れている、と言った方が正しい。
そこは、いわゆる、カニバリズム、的な話と似通うものあり。
禁忌的な深層でのダーク。
本作の魅力はそこにある。
短編集が連なる。
共通するのは、漆黒の闇。
人間が生み出す闇を。
いや、醸造する闇、と言った方が良いか。
これでもか、と表現する。
実に力のある作家だと思う。