本において。 心に残る言葉は財産だ。「遠い声に耳を澄ませて」
「夢は、ごはんと糠漬けとおみおつけだけの朝ごはん」
あるとき、みのりが言った。
そうか、と聞き流しそうになった僕に、
「それだけでじゅうぶん、と思えるような暮らしがしたい」
引用にて。
本において。
心に残る言葉は財産だ。
なんだか心に残る言葉。
それを紡げるのが作家の力。
そこに魅力を感じるのが、読書の世界。
「遠くの声に耳を澄ませて」
宮下奈都
この人の作品は「羊と鋼の森」だけを読んだ事あり。
繊細な言葉が印象的。
そこに関しては変わらず。
ああ。
この人の作品は言葉が残る。
あらすじを引用。
端々しい感性と肌理細やかな心理描写で注目される著者が紡ぎ出す、ポジティブな気持ちになれる物語。
看護師、会社員、母親。その淡々とした日常に突然おとずれる、言葉を失うような、背筋が凍るような瞬間。
どん底の気持ちを建て直し、彼らが自分ひとりで人生に決断を下すとき何を護り、どんな一歩を踏み出すのか。
人生の岐路に立つ人々を見守るように描く、12編の傑作短編集。
ちょっとずつ繋がる短編集である。
基本は独立した話であるが。
しばらく読み進むと、あ!!!となる。
僕は本作において。
「うなぎを追いかけた男」が一番好き。
鰻たる生態系が全くわからない生物の研究に没頭した男がポツリとつぶやく一言が心に響く。
言葉を引用する。
結局、私には何もわからなかった。
うなぎが生まれて死んでいく場所も、自分が何のために生まれて死んでいくのかも、わからないままです。
ただただあちらの海、こちらの海、と航海し続けて、気づいたらこんな歳になっていました」
そこにあるのは人生を捉える暖かい眼差しであり。
瑞々しい力である。
こういう作品を読むと読書家でよかったと思う。
細かい事ではなく。
言葉の力を感じる作品。