のらねこ日記

読書、映画、考え事など。色々なテーマを扱える人になりたいです。

木漏れ日の暖かな春に読みたくなるような小説 「カラフル」森絵都

「カラフル」

森絵都

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あらすじを引用

「おめでとうございます! 抽選にあたりました! 」

生前の罪により輪廻のサイクルからはずされたぼくの魂が天使業界の抽選にあたり、 再挑戦のチャンスを得た。

自殺を図った中学三年生の少年、小林真の体にホームステイし、 自分の罪を思い出さなければならないのだ。

ガイド役の天使のプラプラによると、父親は利己的で母親は不倫しており、兄の満は無神経な意地悪男らしい。

学校に行ってみると友達がいなかったらしい真に話しかけてくるのは変なチビ女だけ。

絵を描くのが好きだった真は美術室に通いつめていた。

ぼくが真として過ごすうちに、しだいに家族やクラスメイトとの距離が変っていく。

モノクロームだった周囲のイメージが、様々な色で満ちてくるーー。

高校生が選んだ読みたい文庫ナンバー1。

累計100万部突破の大人も泣ける不朽の名作青春小説。

 

読書感想文の題材になる事が多いようで。

ネット検索すると文例を多く見た。

それだけ定評を得ている作品である証拠であろう。

傑作であると思う。

 

冒頭を引用する。

死んだはずのぼくの魂が、ゆるゆるとどこか暗いところへ流されていると、いきなり見ず知らずの天使が行く手をさえぎって、

「おめでとうございます、抽選に当たりました!」

と、まさに天使の笑顔を作った。

 

この書き出しには、グッと心を掴まれる。

 

では、抽選に当たるとは何か?

 

天使の言い分によると、

・貴方は前世で大きなあやまちを犯した魂である

 (ただし、あなたは過去の記憶を失っている = 何を犯したかわからない)

・本来なら輪廻のサイクルから外れてもう二度と生まれ変われない

だが、

・貴方は抽選に当たったラッキーソウルです!

・そのため、再挑戦のチャンスがもらえます!

との事。

 

再挑戦のチャンスってなんだよ?

と言うと。

・現世で誰かの身体を借りて生活をする

・天使の世界ではそれをホームステイと言う

・ホームステイが順調に進むと、ある時点で過ちの記憶を取り戻す

・そして、輪廻のサイクルに戻る(めでたしめでたし)

なのだとか。

 

冒頭の5ページ。

この物語設定が、実に軽妙に語られる。

 

僕は、本屋さんで小説の冒頭を立ち読みはしないのだけど。

読めば絶対最後まで読みたくなる事は間違いなく。

騙されたと思って、冒頭だけでも読んで欲しいもの。

 

では、あなたのホームステイ(魂が仮に戻る先は?)

と話が展開し、

小林真くん、たる

"3日前に服毒自殺を図った少年"の中に魂が戻るのである。

 

かのような経緯で、

主人公である"僕"は小林真くんとしての生活を始める。

いわゆる、ホームステイ、である。

 

物語は、なぜ、小林真くんが服毒自殺を図ったか?

との、謎が少しずつ紐解かれる中で進む。

もちろん、彼が自殺したのには理由があり。

周囲の環境も含めて、シビアな問題を抱えている。

 

もちろん、"僕"は罪を思い出す事が第一優先なのだが。

小林真くんとしての生活をする中で、苦しんだり喜んだり・・・。

この続きは読んでみてのお楽しみ。

 

春のある晴れた日の公園で。

彩りに包まれる。

新緑が太陽の加減によって表情を変える。

色彩豊かな花々が咲く。

太陽の明るさが全てを包み込む。

そんな情景を愛おしく思える気持ち。

・・・

本作を読んで、そんな事を思った。

木漏れ日の暖かな春に読みたくなるような小説です。