親友に逢えない人生なんてまっぴらだ。
「でも俺たち、いつまでもそういうバカでいたいなって、十年前に話してたんっすよ。
そりゃ十年も経てば誰だって仕事してるだろうし、結婚もしてるかもしれないし、もしかしたら子供だっているかもしれない。
今よりも大事なもんが増えて、責任も、足かせも、いろんなもんが増えているだろうけど、でも十年のうちでたった一日、みんなと草野球ができないような人生はごめんだよな、って。
十年のうちで一日ぐらい、野球のためになにもかも投げだすようなバカさ加減だけはキープしたいよな、って・・・・
俺たち話してたんっすよ。」
この一文にブワッ。
ボールの芯を綺麗に捉えたホームランのように、心地よく涙腺崩壊のスイッチを叩かれた。
短編集の一編。
他にも良い作品があり、まさに傑作。
「カラフル」に続き、森絵都さんの作品を読み、完全にハマった。
読後に残る余韻。
感情の揺さぶり。
これだから読書はやめられない。
本を当たり前のように日々読んでいると、
時々、感動が薄れているのかな?と思う時があって。
高校時代に、貪るように本ばかりを読んでいた時期と比べると、感動する事が少なくなったと感じていたが。
こういう本に出会うと、決してそういう事はなかったのだと気づく。
「風に舞い上がるビニールシート」
あらすじを引用。
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。
自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。
あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。
本作は短編集であり。
先に引用した作品は「ジェネレーションX」からである。
上のあらすじには「ジェネレーションX」に関する記述はないので、僕なりにあらすじを紹介する。
本作は、冴えない中年サラリーマンと、(一見)常識知らずの若者の話。
とある仕事で、二人は宇都宮在住のおばさんの元へ謝りに行くのだが。
若者は、車中、電話で仕事とは関係ない明日の話ばかりをしている。
中年サラリーマンは、仮にも仕事中だろう、と眉をひそめるのだが。
諸々、話を聞いていくと・・・
との形でストーリーが展開していく。
僕は今、もう30歳の前半で。
縛られるようなものはなにもなくて。
自由に過ごしているのだけど。
(それが幸せかどうかはさておく。)
自由を失っているような友達もいて。
(再度、それが幸せかどうかはさておく)
逢いたいのに、逢えない。
たとえ、最高の時を過ごした、親友であっても。
最近、人生なんてそんなもんだよ、と諦めてた部分もあった。
でも、本作を読んで、
決してそうではない、と改めて思う。
親友に逢えない人生なんてまっぴらだ。
何かを棄ててでも、今年は親友に逢いにいこう。
そんな事を思った。