かえるくんがみみずくんと闘って、東京を救うのである。「神の子どもたちはみな踊る」村上春樹
かえるくんが主人公のお話である。
かえるくんが主人公であり、
みみずくんと闘って、
東京を救う話である。
に収録されている一編。
「かえるくん、東京を救う」
「かえるくん、がんばれ。大丈夫だ。君は勝てる。君は正しい」
と声をかけてくれることが必要なのです。
「それでは昨夜ぼくが言ったことを信じていただけますか?僕と一緒にみみずくんと闘ってくれますか」
あらすじを紹介すると、
かえるくんが主人公のお話である。
かえるくんが主人公であり、
みみずくんと闘って、
東京を救う話である。
との繰り返しになる。
冒頭の一文を引用した方が話が早いかもしれない。
片桐がアパートの」部屋に戻ると、巨大な蛙が待っていた。
二本の後ろ脚で立ち上がった背丈は2メートル以上ある。体格もいい。身長1メートル60センチしかないやせっぽちの片桐は、その堂々とした外観に圧倒されてしまった。
「ぼくのことはかえるくんと呼んで下さい」と蛙はよく通る声で言った。
村上春樹は、こんな物語をなぜ紡げるのであろうか。
純粋にそう思う。
家に帰ると、かえるくんが待ち受けている世界観。
しかも、かえるくんがみみずくんと闘って、東京を救うのである。
この物語を読んでも、世界は変わらないかもしれない。
貴方は救われないかもしれない。
でも、本作を読み終えた時、
僕はどうしてもかえるくんに対する推し量る事のできない思いやりを感じた。
立ち向かう勇気、それを支える優しさを。
それは、
僕の中にかつてない感情でありながら、
たしかに今は心の中に在る感情である。
かえるくんは〜の象徴であるとか。
みみずくんは〜のメタファーだとか。
文学的な語り口ならば、そういう着目をしなければならないのかもしれないけれど。
僕自身は本作に対して、
かえるくん、との異形の存在を、
思いを寄せる事のできるヒーローのように扱った事に着目する。
もう一度、言う。
”かえるくんがみみずくんと闘って、東京を救うのである。”
少し変わったヒーローの物語。
だけど、僕の中で、かえるくんの事は忘れられない存在になったと思う。