映画 「ルーム」
深い闇から抜けだして一歩を踏み出す時、小さな勇気が強く背中を押してくれる。
心に重くのしかかっていたものは…
小さな勇気と一緒なら全く違う景色に見えた。
・・・
これは、小さな勇気の物語。
新しい世界へ踏み出す、小さな小さな勇気の物語。
映画「ルーム」
これは母と子の話。
二人は狭い部屋にいる。
それが何故なのか?はわからない。
だが、観客は次第に知る事になる。
部屋が母子にとって何を意味するものなのか。
※以下、予告編で触れている範囲で。
母と子は、"監禁されている"のである。
小さな部屋に7年。
ある男に監禁されている女。
女は19歳の時に見知らぬ男に監禁されて、そこで子供を産んで母親になった。
主題を明確にしておこう。
母親は監禁した男の子供を産んでいる。
つまり、レイプされたのである。
もっと言えば、7年間監禁されレイプされている、のである。
この点について。
主題が明確。
レイプした監禁犯の子供を産んだ。
その子供を心から愛している母親について。
だからといって、レイプシーンが連続するような映画ではない。
本作は子供の視点で描かれる。
だから、我々は、結果としてそうなっている事のみを知る。
子供は、その部屋以外の何も知らない。
自分が監禁されている事すらもわかっていない。(教えられていない)
産まれた時から部屋にいるからである。
子供の名前はジャック。
そう、ジャックにとって"部屋"は世界の全てなのである。
ポスターに載っている
"はじめまして【世界】"
とは、文字通りの意味である。
ジャックは、外の世界について何も知らない。
彼にとって、部屋にあるもの以外は全てがはじめまして、なのである。
本作は、単純な監禁されている部屋からの脱出劇ではない。
肉体的な監獄よりも精神的な監獄に重点が置かれている、と思う。
ジャックが未知の世界に歩んでいく物語なのである。
犯罪被害、において。
世界はあまりに残酷な時がある。
興味本位の世間であったり、マスコミの取材合戦もある。
被害者に落ち度があったのでは?と見られる事も。
心ない言葉に傷つく事もあろう。
そこから、逃れるためには部屋に閉じこもるしかないのか。
・・・
違う。
ただ、世界はそれだけではなく。
一方で、つなぎとめるものがある事を知る。
部屋のドアを開けようとしてくれる存在がいる。
劇中。
ジャックが世界とのつながりを持った瞬間がある。
母親以外の世界と初めて、つながりをもった時。
とてもありきたりな、使い古された言葉で表現されたのだが・・・。
心に染みた。
観ている最中におもしろい映画と言うよりも。
観終わった後に心に残る映画であったように思う。