のらねこ日記

読書、映画、考え事など。色々なテーマを扱える人になりたいです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

恋愛中毒 山本文緒

捻じ曲がった主観。 そんな言葉が思い浮かんだ。 人が恋愛をしている時、 ほぼ間違いなく(人生の中でも最も強力な)主観の呪縛に囚われる。 それは、 恋愛に、 落ちるなのか、 堕ちるなのか、 陥ちるなのか。 ただ一つ言えるのは、 主観が客観を支配しない…

さがしもの 角田光代

何かを喪った時、 それは瞬間的に貴方を追い込むものではない。 じわじわと真綿で首を絞められるかのように、 段々と心を削り取っていくものである。 削り取られたものに気づく時、 既に喪われたものは手の届かない世界に息づいている。 その大きさは喪って…

クイックアンドダーティー

クイックアンドダーティー 多少粗くても素早く。 ・・・ なるほど、これは自分に欠けている資質である。 もはや使い古された感もあるが、 僕は、 ・石橋を叩いて壊すタイプ ・勝って兜の緒を締めて頭痛がするタイプ である。 もちろん、 石橋である事を確認…

顔馴染みの本屋

顔馴染みの本屋さんがある。 最寄駅の近くのこじんまりとした本屋だ。 商売は成立しているのだろうか?と不安になる時もあり、 二週間に一回程度、足を運んでいるうちに、店長さんが話しかけてくれるようになった。 大抵の場合、 「こんなのも読むんですね」…

戦術家と戦略家

戦術のない戦略では、 勝利への道のりは遠い。 戦略のない戦術は、 敗北前の騒音である。 仕事をしている上で、 戦術と戦略の両方をきちんと理解している人をあまり見たことがない。 (弊社のレベルの問題なのかもしれないけど。) 僕が個人的に思う、後輩に…

最初はフリでいいよ。とりあえず笑っておこう。

最初はフリでいいよ。 とりあえず笑っておこう。 いい言葉だと思う。 楽しいから笑顔になるのではなく 笑うから楽しいのだ。 正論だと思うが、 なかなか難しい。 ただ、実践できるなら、それほど幸せな事はない。 幸せはアンダーコントロールである。 とりあ…

人は測定されるものにしか興味を持たない。

ビジネス書を読んでいると、 大抵の場合、特定の人の顔が思い浮かぶ。 残念な事に、悪い意味で。 悪い例でしか思い出さない人しか周りにいないので、 最近は結構、不遇の日々を過ごしているのかもしれない。 人は測定されるものにしか興味を持たない。 ビジ…

「戦略がすべて」

戦略と戦術の違いについて、 初めて知ったのは、司馬遼太郎の「花神」である。 司馬遼太郎の小説が、ビジネス書として捉えられる理由だと思う。 戦略と戦術の違いを理解していないビジネスパーソンは大抵、ロクでもない事が多い。 戦略家は戦術家を評価し、 …

「男と女 なぜわかりあえないか」 橘玲

「男と女 なぜわかりあえないか」 橘玲 「女と男」は人類の最大の関心事ともいえる。 この永遠のテーマが最新のサイエンスによって解明されつつある。 野心的なタブーへの挑戦のなかから、意外かつ誰でも楽しんで読める最前線の研究を紹介。 果たして女と男…

かえるくんがみみずくんと闘って、東京を救うのである。「神の子どもたちはみな踊る」村上春樹

かえるくんが主人公のお話である。 かえるくんが主人公であり、 みみずくんと闘って、 東京を救う話である。 「神の子どもたちはみな踊る」村上春樹 に収録されている一編。 「かえるくん、東京を救う」 「かえるくん、がんばれ。大丈夫だ。君は勝てる。君は…

「回転木馬のデットヒート」村上春樹 

35歳になった春、彼は自分がすでに人生の折りかえし点を曲がってしまったことを確認した。 いや、これは正確な表現ではない。 正確に言うなら、35歳の春にして彼は人生の折りかえし点を曲がろうと決心した、ということになるだろう。 「回転木馬のデット…

「ヘヴン」川上未映子さん初の長編小説。

二人だけの世界が永遠に続くなら。 それは、無垢で、美しい世界であり続けただろうか。 ただ、永遠の雪景色は存在せず、いつか溶ける。 染まらない白色も実在せず、何かに染まる。 ・・・ その優しくて無垢な細やかな世界が、 守られる事をどれほど望むか。 …

父について語る。猫を棄てる。

父について、語る時、 どうしても感情が篭る。 僕の中にある、内側の内側。 根底的であり、確固たる核心的な部分。 ・・・ どうしたって、 ありがとう との言葉しか思い浮かばない。 僕は父の影響を受けて、 本を読むようになったし、必死に勉強をした。 そ…

「あこがれ」清か、玲瓏、澄明な心。紡がれる言葉はどうしてかくも美しいものなのか。

「ああ、なんという多幸感。 ほとんどアニメーション映画のような疾走感と、小説にしか為し得ない感情のジャンプに陶然とする。 どうしたって、これは泣いてしまう。」 これは、かの有名な「君の名は。」を世に送り出した新海誠さんの本作を紹介する帯の言葉…

「人は無意識に様々なメッセージを発信し続けている。」

「ビジネスパーソンは、いったことや、やったことだけではなく、いわなかったこと、やらなかったこともメッセージになる」 「人は無意識に様々なメッセージを発信し続けている。」 これはわかるんだよな。 背中を見せる、ではないけれど。 言葉にする事だけ…

ストレスゼロの生き方

時々、自己啓発本を読みたくなる。 人生を歩んでいく上で、 平静を保つために、 真っ当な事を、 全力投球で投げてもらいたくなる。 それを、 バチっと受け止める事で、 時々、人は正しい道に戻る事ができる。 自己啓発本ってのは、大体、正論が多い。 正論と…

一人称単数 村上春樹 〜品川猿の告白について〜

村上春樹の新作「一人称単数」。 短編集である。 収録作は下記のとおりである。 「石のまくらに」 「クリーム」 「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」 「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」 「『ヤクルト・スワローズ詩集』」 「謝肉祭(…

一人称単数 〜村上春樹は読書を体験にまで引き上げる〜

「一人称単数」 村上春樹 6年ぶりに放たれる、8作からなる短編小説集。 「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。 しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。 そしてそこでは、私はも…

村上春樹について

村上春樹を読むと、 大学時代がフラッシュバックする。 これは僕のあくまでも個人的な感慨であり、万人に共通するものではない。 ただ、2020年に33歳を迎えた大卒の男性からすると、 ある程度、共通する事かもしれないと思う。 それは、僕が大学時代に、 何…

風の歌を聴け 村上春樹 

「風の歌を聴け」 村上春樹 「風の歌」とは何か? 村上春樹のデビュー作である。 「ノルウェイの森」「海辺のカフカ」等の作品生んだ日本を代表する作家だ。 ノーベル賞候補として話題になる事が多い作家のデビュー作。 読み直す意義はあるだろう。 物語は、…

流浪の月 本屋大賞

"流浪の月" タイトルが本書を読んだ後の感想を雄弁に物語る。 月明かりを眺める時、 人は何か物を思いにふけっている。 寂しくて、孤独が滲むような、そんな感覚。 月が滲ませる静謐なイメージが本作にはよく似合う。 小説とは、 名状しがたい感情に渦巻かれ…