のらねこ日記

読書、映画、考え事など。色々なテーマを扱える人になりたいです。

「悪の経典」 あくまでもエンターテイメントとして。

2016年8月に一人暮らし開始。

同時にあまり本が読めなくなった。

 

原因は通勤時間の短縮。

絶対的な読書時間として確保されていた往復4時間がなくなり。

余剰分の時間は家事と姿を変えた。

本を読んでいると、どうも部屋の汚れが気になってしまう。

霧吹きで吐き出されたのように集中力が霧散する。

(要するに、生活が安定していなかっただけ。)

 

・・・

そんな中。

ぐいっと、心を本の世界に引き込まれる作品に出会った。

・出会ったのが、クリスマスイブ。

・本の世界から脱出したのがクリスマス。

二日で上下巻を読み終えたのも久しぶり。

クリスマスから程遠い内容だったが、まぁ良しとしよう。

 

悪の教典

貴志祐介

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あらすじを引用。

晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。

しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。

学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき―。

ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。

 

学園系戦慄のサイコパスホラーである。

かなり度数高めの・・・

読み終わって思ったが、クリスマスに読むものではない。

(夢中すぎてクリスマスである事も忘れたが。)

 

転がり続ける雪だるまみたいな小説で。

・最初はよいしょと転がしていたはずなのに。

・最終的に、手のつけられない雪だるまモンスター化する。

ストーリーが後戻りできない時点まで進行した時。

もはや夢中、一気呵成で読みたくなる。


怖くて眠れない類ではない。

非現実的と捉える人の方が多いだろうから。

 

先に言っておくが、残酷な話である。

映画化した際、元AKB48大島優子さんが「この映画嫌い」と発言した事で話題になりましたね。

(詳しくは知りませんが。)

楽しい話ではない事は想像がつくだろう。

お花畑でランランラン、的な話を好む人は読まない方がいい。

 

本書は、蓮実聖司たるサイコパス教師を描いた作品である。

ネタバレしない範囲で。

蓮実聖司とは、"邪魔者を殺す事に一切ためらいのない男"なのである。

 ※ただ、外面はカッコよくて、頭も良い、生徒に大人気の教師。

そんな男が教師をやっているとどうなるか?

生意気な生徒がいたら?

(この先は読んでのお楽しみ)

 

ただ、注意して欲しいのは、殺し自体を快楽としていない事。

いわゆる、猟奇殺人犯的な類ではない。

 

例えば、あなたが、"あの上司さえいなければ出世できるのにな〜"と思っていたとする。

普通の人は殺さない。(当たり前)

蓮実聖司はためらいもなく殺す。

本作の肝は、これに尽きる。

ちょっと生意気な生徒がいると・・・

(この先は読んでのお楽しみ)

 

文庫で読んだので、上・下巻。

前半と後半で少々趣が異なる、と感じた。

 

抽象的に表現するならば。

・前半は、名軍師 諸葛亮孔明が知略を尽くして精緻な計画を立てた。

・後半は、もうめんどくさい!!!全軍突撃〜!!!的な行動に出る。

全軍突撃について。

(読んだ人は意味がわかると思う。)

(粗い、強引だ、と表現する人がいる気持ちはわかる。)

 

ただ、僕自身が思ったのは、本作はあくまで、ミステリーエンターテイメント

である事。

小説を読んだ限り、「感情移入して涙を流し、この小説嫌いです・・・」と言いたくなるシロモノではない。

前半と後半の逆転も含めて、楽しめばええんでねーの?と思ってしまう。

フラグが回収されたり、されなかったり。

展開が面白いのが本書の魅力。

 

考え抜かれた仕掛けの多いお化け屋敷が、突如として恐怖のジェットコースターに変わります。

そんな楽しみ方ができる一冊。

 

※個人的に。どうせ、やるなら完全なる悪を描いて欲しかった気もするが・・・