小説は人生を豊かにするものだと思っています。
非常に月並みな表現で恐縮ですが。
人生を知る、小説にはそういう効果があります。
僕が人生において、衝撃を受けた小説。
夏目漱石の「こころ」
高校時代の夏。
かくも深甚な悩みを赤裸々に語る主人公に衝撃を受けた。
もちろん、最後の選択も含めて。
大学生の夏。
思想。
これは大学生ならば誰もが染まるもの。
左へ右へ・・・どちらに振れるにせよ。
僕の思想が形成されたのは大学時代だったと思う。
その中で最も強烈な思想を叩きつけられたのが「カラマーゾフの兄弟」であった。
鈍器で思いっきり頭を殴られたかのような衝撃。
神はいるのか?いないのか?それとも神の創った世界を認めないのか?
夏目漱石「行人」
大学時代の冬。
僕はこの小説を前にして震えた。
自分自身の性質、悩みをここまで言語化されたのは初めてだった。
信じる者と考える者。
このテーマは未だに僕を捉えてやまない。
明治時代にもう自分と同じ悩みを抱えている人がいた。
慄然として慄く。
カズオイシグロ「わたしを離さないで」
静謐。
僕がこの小説を読んだ時に周りの音が聞こえなくなる感覚を味わった。
語り口、ストーリー・・・
全てにおいて静謐さに溢れていた。
夜の湖に一滴の水滴が落ちて波紋が起きたかのような。
水滴が落ちた音以外に一切の物音がないかのような。
初めて知った。
小説は自分を包んでいる空気を変える。
そして、今。
新しく人生の中で大切な一冊になるであろう小説に出会う。
語るのはまた今度にする。
題名だけ。
「ストーナー」
2017年のベスト。
もう一度言いますが。
小説は人生を豊かにするものだと思っています。
非常に月並みな表現で恐縮ですが。
人生を知る、小説にはそういう効果があります。
まさにこの小説はそういう一冊。
人生の小説、と言っても過言ではない。
小説の素晴らしさ、ああ、とても幸せである。