夢中になる読書はいつだって楽しい。
基本的に、僕は本を読み始めてからノンストップで最後まで読み切る事は少ない。
(というか、多くの人がそうだと思う。)
読み終わるまで何日か経過するのが普通だ。
ただ、時に。
生活の中心を完全に読書に奪われる作品がある。
・休日ならば外出しなくなる
・平日ならば定時で帰ろうとする
加えて、睡眠時間を削り出すと"徹夜小説"と呼ばれる。
この読書体験はスゴくいい。
本を読む醍醐味。
大抵の場合、不意打ちで急襲されるので注意。
よっしゃ、徹夜小説だ、と思いながら読み始めるのではなく。
"あれ?止まらない、止まらない。もう24時じゃん・・・」
となる。
"各駅停車の鈍行に乗ったはずが、特急で駅をどんどん飛ばしてます"的なイメージで。
掃除、洗濯、ゴミ出し、食事。
本来すべき事がどんどん手に付かなくなる。
思い出す最初の記憶では恩田陸さんの「六番目の小夜子」が思う浮かぶ。
最近では、貴志祐介さんの「悪の祭典」か。
これが不思議で名作ならば徹夜小説になるか?と言われるとそうでもない。
よく考えると細かい設定に無理があったり、ラストが呆気なかったりする。
(もちろん、名作の徹夜小説もあるのだけど)
ただ、一つ言えるのは。
引き込まれた時間はそれだけで価値がある。
最終的に別れた恋愛が全て悪いものではないように。
「代償」
伊岡瞬
この作家さんでは、初めて読んだ作品。
そして、徹夜小説。
会社の読書家上司が「この人の本は買って読んでいる」と発言しているのを小耳に挟んだので読んでみた。
本屋さんでも推されていたしね。
あらすじを引用。
平凡な家庭の小学生・圭輔は、ある事故をきっかけに遠縁の同級生・達也と暮らすことになり、一転、不幸な境遇に陥る。
寿人という友人を得て苦境を脱し、長じて弁護士となった圭輔に、収監された達也から弁護依頼が舞い込んだ“私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。かつての友情に免じて、私の弁護をしていただけないでしょうか”。
裁判を弄ぶ達也、追いつめられた圭輔。
事件を調べ始めた寿人は、証言の意外な綻びを見つけ、巧妙に仕組まれた罠をときほどいてゆくが―。
『教室に雨は降らない』の気鋭による、クライムサスペンス!
主人公である圭輔に達也たる悪い奴が纏わりつく。
この達也が救いようのない人物。
いわゆるイヤミス的な要素あり。
悪の種類が下卑。
生乾きの湿った雑巾で身体中をを撫でられるような感じ。
どの角度から読んでも魅力がない。
そして、ある日、圭輔の人生を大きく狂わす大事件が起きる。
(圭輔の世界が崩壊するような)
事件に達也は関わっていたのか?
何故、事件は起きたのか?
物語はそこを核として進む。
第一部は事件が起きた幼少期を描く。
事件後の不幸な境遇はみるに耐えないものがある。
そして、その中心にいつも達也がいる。
第二部は大人になった後を描く。
不幸な境遇から奇跡的に這い上がり、弁護士となった圭輔。
彼の前に再び達也が現れる。
殺人の罪で起訴された達也が圭輔に弁護を依頼するのだ。
・・・
本作の構図は不幸の歯車ともいうべき達也との対峙。
大人になった圭輔が過去と向き合う話と言っても良い。
・・・
徐々に明らかになる真実。
結末はどうなるのか?
タイトルである「代償」の意味とは?
・・・
先に述べた通り徹夜小説。
個人的に少々思ったのは。
人物の魅力に欠ける部分が物語を若干浅いものにしている。
(なので評価が多少バラけるのは理解できる。)
ただし、徹夜小説である時点で正義である。
一気読みしたくなる作品。
特設サイトのリンクを貼っておく。