のらねこ日記

読書、映画、考え事など。色々なテーマを扱える人になりたいです。

「鍵のない夢を見る」辻村深月

「鍵のない夢を見る」 辻村深月 本作は短編集であり。 その中の一編である「君本家の誘拐」を紹介したい。 子を持つ母親の話。 手にとっていたヘアゴムを棚に戻し、ふっと横を見るとベビーカーがなかった。 え、と後ろを振り返る。そこにもない。 との書き出…

「盲目的な恋と友情」〜主観はいつだって真実の正しい物語〜

恋と友情は人生を彩る。 とても美しく。 しかし、時に、狂おしく歪んだものになる。 恋と友情はいつだって人生の主役だが。 全てが美しい物語とは限らない。 「盲目的な恋と友情」 辻村深月 あらすじを引用。 タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花は自身の美貌…

「英雄の書」は"物語"の物語である。

"物語" さまざまの事柄について話すこと。語り合うこと。また、その内容。 世の中には色々な物語があって。 悪しきも、逆も然り。 そして、人はどんな時だって物語を求める。 もしくは、物語を求めて生き続けた。 小説に限った事ではなく。 映画はもちろん、…

本屋に行くのは楽しい事です。

本屋に行くのは楽しい事です。 個々人の趣味に影響されるのは当たり前の話だが。 僕自身は本屋に行くのが楽しいと思うのです。 本屋に足を運ばない理由はインターネットの通販であろう。 この問題は本屋に限ることではない。 何を買うにしたって"足を運ぶ面…

「猫鳴り」沼田まほかる

水中に沈められた文鎮のように。 心の中に残る。 異物として底に落ち、動かなくなる。 ・・・ 小説を読んだ感想である。 「猫鳴り」 沼田まほかる 沼田まほかるさんの作品は「ユリゴゴロ」に続き、二作目。 冒頭の感想は「ユリゴゴロ」でも同種の事を感じた…

「悲嘆の門」

宮部みゆきさんは"優れたストーリーテラー"である。 ストーリーテラー 話のじょうずな人。 特に、筋の運びのおもしろさで読者をひきつける小説家。 先を読まずにはいられない作品を次々と生み出す。 高校時代に図書館で宮部みゆきさんの作品を片っ端から借り…

「蝿の王」

もう10年前に読んだ作品。 衝撃的作品、と言っていいと思う。 "すごく面白いから読んでみなよ!!!"と紹介できる作品ではない。 だが、僕にとっては・・・ 読書たる行為が強烈に精神を揺さぶるものである、と、思い知らされた作品の一つである。 大まかに語る…

僕らだけの言葉 「サラバ!」西加奈子さん

"僕らだけの言葉で話そう。" 親密な二人は自分たちだけの言葉を持っている、と思う。 もちろん、それは言語的な話ではなく。 雰囲気を纏った言葉、というべきか。 体験を伴った言葉であり、思い出を象徴する言葉、である。 二人にしか意味を見出せない言葉、…

恩田陸さんの小説について

恩田陸さんが大好きである。 僕が恩田陸さんの作品に最初に出会ったのは「六番目の小夜子」。 正直、内容はほぼ覚えていない。 ただ、夢中になって一気に読んだ事と、あっけない結末だけが記憶に残っている。 その後、恩田陸さんの作品は何作も読んでいるが…

「ユリゴゴロ」

「ユリゴゴロ」 沼田まほかる 私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通とちがうのでしょうか。 本作はこの一文がキーとなる恋愛ミステリー作品である。 冒頭の一文は、主人公の亮介が実家で見つけた「ユリゴゴロ」と題されたノートに書かれ…

「虚ろな十字架」 東野圭吾

大学時代の初期によく読んだ東野圭吾さん。 物語にグイグイと吸い込む力。 小説とは、人を夢中にするものである。 物語に浸る面白さを確実に生み出せる作家である。 「虚ろな十字架」 東野圭吾 東野圭吾さんの作品はよく映画化される。 彼の作品はドラマチッ…

「くまちゃん」角田光代

「くまちゃん」 角田光代 本作は連作短編フラれ小説である。 構成が面白く。 第一話の主人公がフラれる。 第二話はフった相手が主人公になる。 の繰り返し。 ネタバレ気味なのは承知だが。 三話目で辺りで誰しも気づくだろうし。 且つ、最終的にどうなるか?…

「3度目の殺人」 3度目の殺人とは何を意味するのか?

「3度目の殺人」 このタイトルの意味は何なのか?が肝。 緊張感の滲む空気感でストーリーが進む。 誰しもが考えるはず "3度目の殺人"とは何を意味しているのか? 2度目までは物語の中で明らかになっている。 では?示唆される3度目とは? この点はミステリー…

短編の良さ 満願

短編は難しいと思う。 具体的に。 圧倒的に印象に残らない事が多い。 読んでいる時間が短いのだから当たり前ではあるが。 小説を読む、とは世界観に浸る行為でもある。 読者を夢中にして離さない=浸る事ができる小説、と言い換えてもいい。 短編は短いが故…

「若冲」 澤田瞳子

蓮の花が泥濘から咲き出るが故に麗しいが如く、美しきものは、決して高潔清高なる魂からのみ生まれるわけではない。 本文から引用。 「若冲」 澤田瞳子 本作のテーマは若冲の絵はどのようにして生まれたのか?である。 上記の引用はそのテーマを考える上で重…

「ストーナー」人生の小説

小説は人生を豊かにするものだと思っています。 非常に月並みな表現で恐縮ですが。 人生を知る、小説にはそういう効果があります。 僕が人生において、衝撃を受けた小説。 夏目漱石の「こころ」 高校時代の夏。 かくも深甚な悩みを赤裸々に語る主人公に衝撃…

「代償」 伊岡瞬

夢中になる読書はいつだって楽しい。 基本的に、僕は本を読み始めてからノンストップで最後まで読み切る事は少ない。 (というか、多くの人がそうだと思う。) 読み終わるまで何日か経過するのが普通だ。 ただ、時に。 生活の中心を完全に読書に奪われる作品が…

「蜜蜂と遠雷」 恩田陸

本屋大賞の作品は面白い。 直木賞の作品は面白い。 なので、本屋大賞と直木賞をダブル受賞した作品「蜜蜂と遠雷」 そりゃ面白いに決まってますよ。 アカデミー賞 全部門受賞作品!!!! みたいな感覚だと思いますがね。 「蜜蜂と遠雷」 著者 恩田陸 音楽の話。 …

蒼穹の昴

広大で壮大。 中国を舞台にした物語は何故、かくも大きいのだろう。 心に強く残る。 「蒼穹の昴 1〜4」 浅田次郎 再読である。 記録によれば2012年に読んでいるので、5年ほど前。 三国志以外の中国小説で最も鮮烈なイメージを残した小説かも知れず。 前々よ…

八海山は青春の味

八海山は青春の味。 大学時代に盟友とよく飲んだが故。 今でも八海山を飲むと、彼の顔が思う浮かぶ。 八海山を飲んで、友の顔を必然的に思う浮かべるのは嬉しい事にて。 モノに思い出が付随した時。 それは大切な宝物になる。 今は遠い地にてお互いの道を進…

美術の楽しみ方入門として〜楽園のカンヴァス〜

絵画はシンプルな見方をすれば良いのよ、と言われた事がある。 基準はただ一つ。 "家に飾りたいか?否か。” 一番家に飾りたいと思った作品が、あなたのお気に入りだから、と。 僕は足繁く美術展に通うようなタイプではないが。 たまに行けば楽しめる。 そん…

「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」

ケネディ大統領暗殺。 誰しもが知るであろう大事件。 1963年11月22日の出来事。 映像で残っているのが衝撃的。 インターネットで検索すれば、決定的瞬間がすぐに見れてしまう。 不可解な点が多く、陰謀説が囁かれているのでテレビでも取り上げられる事が多い…

「イノセントデイズ」〜儚き雪の結晶を抱くような話〜

書店が推している本。 すなわち、流行りの本に手を出したのは久しぶり。 目立つ場所に平積み。 話題であろう事、間違いなく。 著者も内容も知らぬが、読んでみようと思いて手に取った。 日曜日に購入して。 月〜火で読み終えた。 夢中になれる本である事、保…

「マリリン 7日間の恋」

「何を着て寝ますか?」 「シャネルN°5を数滴」 ・・・ マリリンモンローを語る上で有名なやりとりである。 ・・・ 僕は香水に興味はないのだが。 このやりとりで"シャネルN°5"だけは知っている。 (具体的にどんな香りかは知りませんけどね。) 「私は寝る時…

「ミリオンダラーベイベー」

昔、予備知識なしに観て衝撃を受けた。 今回、2回目。 改めて素晴らしい映画と感じる。 多くの人に観て欲しい映画。 全てが丁寧。 「ミリオンダラーベイベー」 "選択"の物語だと思う。 人は誰しも、"選択"をする。 進路、転職であったり。 成功と失敗が50/50…

久しぶりのスティーブンキング「ペットセマタリー」

久しぶりにスティーブンキングの作品を読んだ。 思えば、読書人生の先駆けにいるのがスティーブンキング。 地元の図書館によく置いてあった、との背景もあるが。 紡ぎ出す世界観が好きだった。 彼の作品は大きく二つの分類があって。 ①ハートウォーミング ②…

「ラ・ラ・ランド」〜夢に恋する映画〜

"あれ?俺の小指、骨折してんのかな・・・?" フットサルのキーパーでシュートを止めてから指が痛い。 不味そうな紫芋みたいな色。 友人は・・・ "膨れてシャウエッセンみたいになってるね、焼いて食べれば?笑" と呑気な事を言う。 (心の中で、お前の指が折…

「ハサミ男」〜思わず"え?"となるミステリーの傑作〜

まあ、つべこべ言わずに読んでみてよ、とオススメする作品。 ミステリーの傑作。 「ハサミ男」 殊能将之 ミステリーで明かして良いのは"誰かが死ぬ事"だけである。 それ以上の紹介は蛇足。 犯人を知ってしまったミステリーなんて魚がいない水族館のようなも…

大江健三郎文学の金字塔。〜かつてあじわったことのない深甚な恐怖感〜

大学生時代に読んで衝撃を受けた作品。 再び手に取り、やはり衝撃を受ける。 楽しい小説ではない。 個人的に暗いニュースが多いので。 どうせなら負のベクトルに突き進んでやろうと思った結果、手に取った。 「個人的な体験」 大江健三郎 あらすじを引用。 …

賞味期限とは?なんぞや?

「賞味期限切れだよ!お前は!!!」 独身アラサーにとって。 瀕死のアザラシを砂漠に放り投げるような辛辣な一撃。 言われた事はないが。 被弾している人は見た事がある。 (当然、変な空気になっていた) 世間的に男性はさておき。 女性は特にだろうなぁ。 …